目指せ”おじさま”計画

冴えないおっさん、奮闘中

アインシュタインはダンテからインスピレーションを受けた説

いい加減に書かないとな、と思い続けていた読書感想文でございます。

カルロ・ロヴェッリ『すごい物理学講座』。
たしかに色々凄かった、イタリア人物理学者による一般向けの物理学の解説本です。

帯に書かれている”売り”は「ループ量子重力理論」の解説なのですが、実際に読んでみると、ダンテのくだりがあまりに強引すぎて面白い。
ダンテが『神曲』で書いた宇宙の姿は、アインシュタインが見ていたそれと類似していた、という内容なのですが、ダンテとアインシュタインを同列で語る本はなかなかお目にかかれない(というか、この本位しかない)のでないでしょうか。
さすがはイタリア人。自国文化へ向ける愛情と誇りは他国民の追従を許しません。

もちろん物理本としても面白い、というか構成等よく考えられています。

頭にギリシアの哲学者デモクリトスが考えた「原子」の話を持ってきます。
直後に「ブラウン運動」の解説でデモクリトスの説が正しかったとし、同時にこの本の主人公ともいうべきアインシュタインの顔見世を行います。
その後、ニュートン万有引力、ファダレーとマクスウェルを経由し、満を持して真打アインシュタインの登場です。
ダンテとアインシュタインの夢の競演で相対性理論を解説し、いよいよ量子力学へ突入。
ロヴェッリ自身の若かりし頃のエピソードを交えながら量子力学の(正確には「ループ量子重力理論」の)解説が始まるのですが、ここで初めの布石が活きてきます。
物質はどこまでも小さくしていくと、最小の粒になるんだよ。
それがデモクリトスのいう「原子」であり、ループ量子重力理論が考える最小の「量子」。
キレイにまとまりましたね、拍手。

訳者あとがきによれば、この本の著者カルロ・ロヴェッリ氏は、この本を更に平易にした本を上梓し、ヨーロッパでベストセラーになったそうです。
確かにもう少し易しくてもいいよね、という内容ではありますが、逆に言うとそれだけ中身がぎっしり詰まっているという事。
数式は出てきませんので、特に文系を自認し、でも量子力学とか齧ってみたい方におすすめです。
ティーヴン・グリーンブラット『一四一七年、その一冊がすべてを変えた』を読まれた方はなら、間違いなくニヤニヤして読めるはず。
古代ギリシアの思いつきが、量子力学理論2大勢力のうち一方の精神的支柱になっていると思うと、とても愉快な気分になるのは私だけじゃないと思うんだよなぁ。